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DOUJIN2026-07-1711 MIN READ

同人誌ができるまでの13ステップ

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同人誌を1冊出すまでにやることは多いが、順番さえ決まっていれば1つずつ潰していける。ここに書くのは私自身の作り方である。制作フローは人によって結構違うので、そのまま真似するより自分がやりやすい形に組み替えてもらう方がいい。まずは全体像から。

全体の流れ

  1. 参加したいイベントを決める
  2. 本の内容を決める
  3. ページ数を決める・出したいグッズを調べる
  4. 納期を確認して印刷所を決める
  5. イベントに参加申し込みをする
  6. 描く
  7. 本の構成・デザインを作る
  8. 会場設営を計画して必要品を揃える
  9. 印刷所に発注してデータを納品する
  10. 通販登録と会場回収を申し込む
  11. 会場で頒布する
  12. 通販委託先に回収してもらう
  13. 振り返る

以下、要点のある工程を順に見ていく。

1. イベントを先に決める

まずは出たいイベントを決める。ただし申し込みはまだしない。内容やページ数を決めてからにする。

先にイベントを決めるのは、それだけで4つの問題が片付くからである。

  • 締め切りが決まる — 開催日が制作の締め切りになり、そこから全ての工程を逆算できる。先延ばしを防ぐ効き目がいちばん大きい
  • ジャンルが決まる — 多くのイベントは特定ジャンルに特化している。コミックマーケットはオールジャンルだが、申し込み時にジャンルの選択が要る。ジャンルが決まると読者層と作品の方向性も定まる
  • 頒布数が伸びる — 物理本はイベントに絡めた方が届く。SNS では出会えない人に手に取ってもらえるし、委託販売でもイベント名で特集が組まれる
  • モチベーションが上がる — みんなが同じ日に向けて描いているので、単純に気分が乗る

どのイベントにするか迷うなら、とりあえずコミックマーケットでいい。世界最大の同人誌即売会なので、日本にいるなら出て損はない。多くのイベントはコミケを参考に運営ルールが決められている印象があるので、先にコミケを経験してからオンリーイベントに広げると勝手が分かりやすい。

2. 内容の形式を決める

同人誌は基本的に自由なものである。便宜上の分類はあるが、出したいものを出したい形で作ればいい。形式ごとの傾向はこのくらいの整理で足りる。

種類特徴メリットデメリット
イラスト集イラスト中心。テーマを決めて構成する文章力が要らない。絵柄と技術をアピールしやすいフルカラーだと印刷コストが高い。構成に工夫が要る
漫画ストーリーや4コマなどコマ割り構成読者を引き込みやすく、形式も多様技術的な難易度が高い。制作に時間がかかる
小説文章主体絵が苦手でも作れる。印刷コストが低い文章力が問われる
評論・研究本特定テーマの深掘り専門知識や独自視点で差別化できる読者層が限定的。資料収集に時間がかかる
アンソロジー複数作者の合同本負担を分散でき、複数作者のファンに届く参加者調整と編集が煩雑。品質の統一が難しい
ポートフォリオ作品・経歴のまとめ実力を総合的にアピールできる一般読者向けというより業界人向けになりがち

選ぶときの判断材料は、得意分野を活かせるか・想定読者の需要に合うか・締め切りまでに完成できるか・予算に見合うかの4つである。

3. ページ数とグッズを決める

イベント申し込みの時点でページ数の入力欄があるので、ざっくりでも先に決めておく必要がある。後から変わっても問題ないので気軽に決めていい。私は過去に描いたファンアートのストック数から逆算することが多い。

  • 16〜32ページ — 薄めの本。初めての人や時間の無い人向けで、コストも低い
  • 28〜44ページ — もっとも一般的な厚み。内容と価格のバランスを取りやすい
  • 48〜100ページ以上 — 内容は充実するが、時間もコストもかかる

ページ数は製本方式の選択にも効いてくる。中綴じ・無線綴じの向き不向きは後述の「印刷設定の基礎知識」を参照。

グッズを一緒に出すなら、クリアファイル・アクリルスタンド・缶バッジ・ポストカード・ステッカー・タペストリーあたりが定番である。最小ロット数・保管場所・イベントの規定は先に確認しておく。本の制作時間を圧迫しない範囲に収めるのも大事。

4. 印刷所と納期を決める

イベント会場に直接搬入できる印刷所を選ぶのがもはやマストである。本はかなり重く、自宅から会場まで運ぶのは現実的ではない。初めて本を作るなら グラフィック あたりから始めれば大きく外さないと思う。

印刷所が決まるとデータ入稿の締め切りも決まる。締め切りには「早割」(イベントの1ヶ月前くらい)から「滑り込み」まで段階があり、仕上がりは同じでも単価が結構変わる。部数が多いほど差額は無視できなくなるので、できるだけ早い側に寄せたい。

納期の詰め方はこの順番でやっている。

  1. イベント日から逆算する(前日には手元にある状態を目標にする)
  2. 印刷所の繁忙期を確認する(大型イベント前は混雑する)
  3. 入稿から納品までの所要日数を確認する(通常納期と特急納期)
  4. 入稿締め切り日を確定させる(営業日と入稿方法も一緒に確認する)
  5. 不測の事態に備えて1〜2日の余裕を残す
  6. 入稿後も進捗を定期的に確認する

印刷所そのものを比べるときは、同人誌印刷の実績・特殊印刷への対応・見積もりの比較・サポート体制・サンプルでの色味の確認、そして会場直接搬入サービスの有無を見る。

5. 参加申し込みをする

申し込み方法はイベントごとに違うので各公式サイトを確認する。ほとんどのイベントで事前のサークル登録が要るので、そこは サークル登録から始める同人イベント出展の事前準備 にまとめた。申し込みは「スペース」単位で場所をもらう形になる。

6. 描く

絵を描く。頑張る。イラスト集の場合、最低限これだけは押さえておく。

  • 本のサイズ(A4・B5 など)を意識してキャンバスサイズを設定する
  • 印刷に耐える解像度で描く(300dpi 以上
  • 印刷所のカラー指定(CMYK / RGB など)を先に調べておく
  • 「表紙」と「中身」の区別くらいは意識して描く

実際には「描く」と次の「構成を練る」は同時並行になることが多い。構成を固めてからそれに合わせて描く人もいるので、やりやすい方でいい。

7. 構成とデザインを作る

構成を練る段階でページ数が変わることもある。最初の計画に縛られず、計画が変わるのを楽しみながら作る方が結果的にいい本になる。

本の基本構成はこうなる。

  1. 表紙(1ページ目)
  2. 表紙の裏(2ページ目)— 白紙にすることが多い
  3. 本文(3ページ目から)— 3ページ目は目次や中表紙、イラストは4ページ目からが多い
  4. 奥付(最後から3ページ目)— あとがきなどの情報はここに集まる
  5. 裏表紙の裏(最後から2ページ目)
  6. 裏表紙(最後のページ)

表紙と裏表紙は特に重要である。「表紙買い」がかなりあるくらいなので、ジャンルとキャラが一目で分かるものが望ましい。表紙と裏表紙で1枚絵にする人、差分を使う人、裏表紙にはイラストを載せない人と、使い方は色々ある。

イラスト集の中身を組むときに効いてくるのは次のあたり。

  • 全体の構成 — テーマ別・時系列・色調のいずれかで軸を作る
  • ページレイアウト — 見開きの中央の折り目を意識する。中綴じと無線綴じで見え方が違う
  • 緩急 — 白ページで区切りと余韻を作る。詰め込みすぎない方が本らしくなる
  • メリハリ — イラストのサイズに大小を付ける。横長のイラストは見開きに回す
  • 補足情報 — キャプションはイラスト集なら不要。コメントや裏話を入れると同人誌らしくなり、逆に入れない方が作品集としては引き締まる

8. 設営の準備を並行して進める

頒布物以外にも作るものがある。ポスター、お品書き、テーブルクロスの3つは自分で用意することになるので、入稿直前に思い出すと厳しい。設営の考え方は 同人イベントのスペース設営を立体的に組み立てる、当日の持ち物は 同人イベントの持ち物を重要度で仕分ける に分けて書いた。

9. 発注してデータを納品する

入稿でつまずきやすいのは4点ある。

  • 納品先を確認する — イベント頒布分は会場直接搬入を忘れずに指定する。発注時にスペースの場所を入力しておくと、当日の朝には自分のスペースに本が置いてある。委託先の倉庫への直接搬入もでき、自宅に在庫を抱えずに済む
  • ページ数を確認する — 全体のページ数と本文を載せられるページ数は違う。基本構成を数え直す
  • 納品形式を確認する — PSD / ai / png / PDF など印刷所によって違う。たいていテンプレートファイルが用意されているのでまず確認する。データ不備は連絡が来るので落ち着いて直す
  • 締め切りを厳守する — 締め切りを過ぎたら本は刷られない。ここだけは融通が効かない

10. 通販登録と会場回収を申し込む

通販委託をするなら、事前に「委託作品の登録」と「会場回収の依頼」を済ませておく。会場でもできなくはないが、当日は他にやることが多い。以下はメロンブックスの場合の流れである。

委託作品の登録は、サークルポータルの左メニューから「委託作品登録(新刊登録)」を選んで必要情報を記入する。ここでイベントで頒布するものにはイベント名を必ず記入する。イベントごとにサイト内で特集が組まれるので、そこに載るために要る。タグやキーワードは最低限で構わない。委託先の担当者が追加してくれたり、作品紹介を書いてくれたりすることもある。

会場回収は左メニューの回収申し込みから参加イベントを選ぶ。コミケは1日目と2日目でページが別なので注意する。サークル名・回収する作品・回収の目安部数を入れるが、部数はあくまで目安なので厳密でなくていい。当日は半端な数で渡しても委託先が数えて登録してくれる。

11. 会場で頒布する

サークル入場と一般入場では入場開始時間が違うので事前に確認しておく。会場付近の店で何か買えると思わないこと、ゴミは会場の案内に従って処理することも合わせて頭に入れておきたい。

会場に着いたらこの順番で動く。

  1. 自分のスペースを確認する(会場マップは事前に公開される)
  2. スペースを設営する(荷物を広げがちなので隣と声を掛け合いながら)
  3. ご近所さんに挨拶する(迷惑をかけ合うのは両隣なので、両隣くらいでいい)
  4. 見本誌を提出する(忘れると頒布停止になりかねない
  5. 繋がりのある方へ挨拶に伺う(自分の頒布物を渡せるとなお良い)

見本誌の提出義務の範囲はイベントによって違う。当日配られる封筒などの記載をよく読むこと。

12. 委託先に回収してもらう

イベントが落ち着いてきたら、余った分を委託先の回収窓口に持っていく。場所は事前に確認しておく。メロンブックスの場合は事前の回収申請メールを見せると段ボールごと預かってくれて、詳細な数は後から数えてくれる。

13. 振り返る

戦利品を眺めてほくほくする。感想を SNS に書いてくれる方も結構いるので、次のモチベーションに繋げる。余裕ができたら今回の経験と反省点を自分なりにまとめておく。この記事も元はその振り返りのメモである。

印刷設定の基礎知識

入稿画面で急に出てくる用語をまとめておく。

製本方式

方式特徴メリットデメリット
無線綴じ背表紙で接着する。厚めの本向き100ページ以上も製本できる。背表紙に文字を入れられる。長期保存向きコストが高い。完全には開かず見開きの内側が見づらい。28ページ以下には不向き
中綴じ中央をホチキス留めする。36ページ以下の薄い冊子向き安価。完全に開くので見開き向き。納期が早く少部数にも向く通常64ページまで。書棚で目立ちにくい。ページ数が多いと中央が膨らむ
平綴じ端をホチキス留めする。20ページ以下最も安価。作業が簡単で納期が早い見栄えが劣り、耐久性も低い

用紙と厚み

用紙は上質紙(一般的な印刷用紙)・コート紙(光沢あり)・マットコート紙(光沢を抑えた高級感)から選ぶことが多い。私はマットコート紙が好みである。

厚みは坪量(kg)で指定する。本文用紙は 90kg が標準で、70kg は薄め、110kg はイラストや写真が多い本、135kg は画集のような厚みになる。表紙用紙は 135kg が標準、110kg は薄め、160kg でしっかりした表紙になる。

その他の設定

  • サイズ — A5 と B5 が一般的。私はいつも B5 にしている。A4 はイラスト集に多い
  • ページ数 — 通常は4の倍数。表紙4ページ + 本文◯◯ページの合計で表す
  • 色数 — モノクロ(黒1色)かフルカラー
  • 加工 — 表紙の PP 加工(つや出し)・マット PP 加工(つや消し)、観音開きなどの折り加工
  • 印刷方式 — 大量印刷ならオフセット印刷、少部数ならオンデマンド印刷

発行部数はどう決めるか

ある程度刷ってしまって、余ったら委託先に回すのがおすすめである。イベント当日に完売させることより、刷った本が最終的に読者へ届くことの方が大事だと思っている。

  • フォロワーが数千から数万なら200〜300部刷っても通販で捌ける
  • フォロワーが数百くらいなら20〜50部から始める人が多い

私は初参加のときに300部刷った。会場では全然出なかったが、数ヶ月かけて通販で完売した。会場での出方だけで結果を判断しない、というのがこのときの学びである。

同人誌を作ってよかったこと

  • 同好の人と直に交流できる — SNS で交流があっても、実際に会ったことのある人の方が断然印象に残る。絵描き仲間、いつも反応をくれる方、仕事に繋がる方と実際に会える機会は他にそうそうない
  • 本やグッズ制作の一連の流れを覚えられる — 普段絵だけを描いていると全く触れない知識と経験が、この工程には詰まっている